僕のミューズ
このまま話を進めることに違和感しかなかった為、俺は意を決して、切り出した。
「芹梨…考えてくれた?モデルの事」
芹梨も話が切り出されることを感付いていたのか、特に表情を変えずに俺を見つめる。
ただ、その瞳には明らかに戸惑いの色が現れていた。
少し考える素振りを見せたが、やがて俯いて、ゆっくりと手を動かした。
『…ごめん』
…わかっていた、気はした。
俺は芹梨の顔が上を向くのを待って、続けた。
「理由は?」
『え?』
「断る理由、教えてくれない?」
そう聞くと、彼女の顔には益々戸惑いの色が濃くなる。
その表情が、俺を更に焦らせた。
「言えない理由?」
『そういうのじゃ、ないけど…』
「俺は俺の作った服を、芹梨に着て欲しいんだけど」
そう真っ直ぐに、俺は伝えた。
芹梨もまた、真っ直ぐそれを受け取った。
受け取った上で、やっぱり小さく俯く。
それが答えなのだろうと、わかった気がした。
一気に気持ちが下がるのがわかる。
知らされた、俺と芹梨の、温度の違い。