僕のミューズ
……………
どれくらいの時間、フロアにいたのだろう。
気付いたらショーモデルが男性に変わっていて、フロアの雰囲気も変わっていた。
俺は立ち上がって携帯を開く。
紺から一件着信があった。
…彼女、どうしただろう。
とりあえず控え室に戻らなきゃいけない。
俺はようやく落ち着きを取り戻し、小走りで控え室に戻った。
廊下ですれ違う他のチームの先輩達に会釈をしながら、控え室のドアを開ける。
控え室は広く、俺達のチーム以外の人達も使っていた。
今からショーなのか、慌ただしく準備している。
俺はぐるっと見渡して、知った顔を見つけようとした。
が、半分くらい見渡した所で視線が止まる。
彼女だった。
慌ただしい周りの真ん中で、小さく視線を動かしている。
その表情と動きから、どうしたらいいのかわからないことが見てとれた。
当然だ。
知り合いも誰一人いなく、いきなり連れ込まれた場所で戸惑わないはずがない。
俺は急いで彼女に駆け寄った。
「わりぃ!」
ぽんっと肩に手を乗せる。
彼女はこっちがびっくりするくらい驚いて振り向いた。