僕のミューズ
……………
あれから芹梨とは、連絡をせずにいた。
俺からは何を送ればいいかもわからなかったし、芹梨からも何も連絡はない。
せめてあの日、呼び出しておいてすぐに勝手に帰った事を謝ろうと思ったが、どうしてもメールを打つ手が躊躇われた。
ショーの手伝いで忙しいからと、そう自分に言い聞かせていた、丁度そんな時だった。
…「え、何でいるの?」
いよいよショーの準備も大詰め、後はモデルを使っての実践ランウェイだけという今。
そのランウェイを歩いていたのは、見覚えのある、自信に満ちた表情。
たまたま練習を見に行った俺の目に映ったのは、本当は先輩達のショーで歩くはずだった彼女。
そこを歩いていたのは、他でもない、あかりだった。
歩き終え、後輩の指示を確認するあかり。
彼女の視線がふと俺に向いたかと思うと、ぱっと笑顔になり駆けて来た。