僕のミューズ


……………

ショーまであと数日を切った頃。

俺の予想とは裏腹に、あかりはほぼ毎日リハーサルに来ていた。

後輩からの指示はきっちり守り、そのクオリティは目に見えて高くなってきている。

このやる気をどうして前のショーで見せてくれなかったのかと思ったが、あかりがショーを棄権してくれたお陰で芹梨と出会えたのもまた事実で。

その芹梨とは、未だ連絡を取れていない。

複雑な心境のまま、俺はただ練習の様子を見守った。



…「ヤバいかなぁ、雨」

あかりが体育館の入り口から外を眺めながら呟く。

ショーの前日。
その日もリハーサルをしていたが、途中から屋根を叩く雨音に気付き、外を見た時にはもう土砂降りだった。

「何か、警報出てるらしいっすよ」
「まじで?」
「今日はもう解散しましょっか」

片しながら後輩が言う言葉に、その場にいた皆は揃って頷いた。
ショーはもう完成していたし、何よりそれだけ雨脚は強くなる一方だったのだ。


「俺バイクだし、先帰るわ」

一通り片付けた後、紺がそう言って帰ろうとした。

< 144 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop