僕のミューズ
とりあえず構内に駆け込んだ二人は、水が滴るくらい濡れている。
「大丈夫?」
「うん、…って言えるかな、これ」
走った息を整えながら、自分達の姿を眺める。
見事なまでにずぶ濡れの二人に、思わず吹き出してしまった。
「遥、濡れすぎだしっ」
「いや、お前だってメイク落ちてるから」
「えー、うそ…」
次の瞬間、黒い空が一瞬黄色く光り、続け様に爆発音の様な雷が鳴り響いた。
「きゃっ」
今笑っていたあかりが思い切り肩をすぼめる。
そういえばこいつは、雷が苦手だった。
ずぶ濡れのまま、不安気な視線を空に送るあかり。
そんな姿を見ながら、俺は軽くため息をついた。
「あかり」
「え?」
…仕方ない。
「とりあえず、うち来るか」