僕のミューズ

「ありがとう。芹梨ちゃんのお陰で最高のショーだった。俺のイメージ通りのランウェイだったよ。本当に感謝してる」

そう言って、宮田先輩からどこかのショップバックを受けとる。
それをそのまま彼女に渡した。

彼女は不思議な表情をしながらそれを受けとる。

先輩は紙袋を見つめた彼女の肩を叩き、視線を合わせた。

「さっきのショーで着たドレスだよ。って言っても、これはちょっと丈が短いやつなんだけど…普段でも着れるタイプなんだ。芹梨ちゃんにあげるよ」

彼女は目を丸くして、首を振った。
紙袋を返そうとする彼女を先輩は制して、「ほんのお礼」と言う。

彼女は戸惑いながらもそれを受け取り、おずおずとお辞儀をした。


そこで俺は、妙な違和感を抱く。


「なぁ…、」

彼女に声をかけた瞬間、控え室のドアが荒々しく開いた。

彼女は声をかけた俺を無視し、皆の視線が向かった控え室のドアに顔を向ける。


「芹梨!」


控え室に入って来たのは、彼女の友達だった。
ぺしゃりと落ちたジェラートを思い出す。

ショートカットの彼女の視線は彼女の次に俺を捉え、くっと睨んだままつかつかと寄ってきた。


…やべぇ。


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