僕のミューズ
遠退く女神
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ジュッと美味しそうな音がキッチンに響くと同時に、鼻先をくすぐる塩コショウの香りが充満した。
さっと炒めたベーコンをご飯の上にのせる。特製のタレをかけてもう一度コショウとパセリをかけたらできあがり。
「お待ちー」
ガラスのテーブルにそれを置くと、ほかほかの湯気の向こうで芹梨がにっこりと笑った。
『美味しそう!』
「美味しいんだよこれが。昔やってたバイトのまかない。ベーコンライスプレート。なんかおしゃれだろ?」
お茶をついで、俺も芹梨の横に座った。
『食べていい?』
「どーぞ。いただきまーす」
『いただきまーす!』
スプーンで可愛い口元に運ぶ。
「美味しい?」
聞くと、芹梨は嬉しそうに目を細めて手を頬に当てた。
美味しい、という意味だ。
「よかったー」
『遥、料理上手だね』
「芹梨ができなさすぎなんだって」
そういうと、芹梨は口元をとがらせるが、『まあね』と肯定した。