僕のミューズ
最初はピンとこなかた話の内容だったけど、次第に、体の内側にじわじわと興奮に似た感情がわき上がってくるのがわかる。
「うん・・・うん。いいと思う。すげぇ、いいと思う」
俺は自分の中で噛みしめる様に呟き、思い切り頷いた。
「合ってるよ、芹梨に。うん。絶対合ってる!」
余りにも勢いよく言う俺に、芹梨は若干驚いた表情を見せる。
でも本当に、すごくしっくり来たんだ。
俺が初めて芹梨に会った時に感じた衝動。
芹梨の最初のランウェイ。
どれを取っても芹梨が持っているものを証明できる気がした。
そして何より、芹梨がそれを打ち明けてくれたこと。
前に進もうとしてくれていること。
それがとても嬉しかったんだ。
くるりと丸い瞳で俺を見つめていた芹梨だったが、やがてゆっくりと表情を崩し、柔らかくなった表情で手話をした。
『・・・ありがとう』
そう言うと立ちあがって、少し躊躇しながらもちょこちょこと俺の側に寄ってきた。
その細い体を俺の横にちょこんと座らせ、膝を抱えて唇をかんだまま小さく言う。