僕のミューズ
『遥に大丈夫って言って欲しかったの。そしたら絶対・・・大丈夫な気がするから』
そうしてこつんと、俺の肩に頭を乗せてきた。
芹梨の柔らかいシャンプーの香りが鼻先をくすぐる。
いや、ちょっと、お前。
「・・・可愛すぎだって」
赤くなった頬に気付かれない様に、少し顔を背けて呟く。
当然聞こえていない芹梨は、安心したのか俺の肩にもたれたまま目を瞑った。
「いや・・・この体勢は結構、きついもんが・・・」
必死に理性を保ちながら、俺はふうっと息をついて芹梨の頭をなでた。
芹梨の安心が俺にも伝わる。
優しい空気の中で、俺は小さな幸せを感じていた。
こうやって一歩ずつ、二人で前に進んで行くんだ。
そう、その時の俺は思っていた。