僕のミューズ
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芹梨のオーディションの日まで、あっという間に過ぎた。
俺は俺でショーのドレスのデザインの仕上げに取りかかっていたし、夏休みも終わったので学校も始まっていたから余計時間が経つのが早く感じたのかもしれない。
オーディションの詳しい内容は聞かなかったが、書類審査の後面接があるようだった。
書類審査は実はもう通過していたようで、残すは面接だけだと言っていた。
面接と言っても俺が知っているのはバイトの面接か就活くらいのもので、芹梨に対しては何のアドバイスもできなかったけど。
日にちが近づく度に俺は緊張が増していたのだが、当の本人は案外度胸が座っているのか、けろっとしていた。
面接当日は、『頑張るね』と一言メールが来ただけ。
それに対して俺も、『頑張れ』と一言送った。
そんな芹梨にとって大事な一日が終わって数日後。
予想より遥に早く、その封筒は芹梨の元に届いた。
・・・部屋のチャイムが鳴り、寝ぼけ眼で玄関を開ける。
そこには、緊張の面持ちで立っている芹梨がいた。
「え・・・どうしたの、こんな朝早く」
朝早く、と言ってももう8時を回っていたが、一般的な大学生にとっては早い時間だろう。
そんな寝起きの俺の前に、芹梨はそっとその白い封筒を差し出した。
頭がはっきりしない俺は、それがなんだかわからない。