僕のミューズ
「30分!?」若干焦った声が電話越しに聞こえたが、すぐにあかりはため息混じりに言った。
「無理ー。だって今からシャワー浴びて準備しなきゃだし…ごめん遥、怒ってる?」
怒ってる?違う。怒りなんか通り越してる。到底あかりは間に合わないと判断した俺は、もう次の策を頭に巡らせていた。
「もういーよ。来んな」
「え、ちょっ、遥ぁ?まじごめんって、今度埋め合わせ…」
あかりの声が通話ボタンで切れた。俺は携帯をポッケに突っ込み、ショーが終わったらあかりの連絡先を削除することを決意した。
「…どーすんだよ」
俺の口調で事態が読めたのか、紺がいつになく真剣に聞いてくる。当然だ。俺達のショーじゃない。先輩のショーなんだ。
俺は立ち上がって、「探すしかねーだろ」と呟いた。
「え?」
「探してくる!あかりよりいいモデル連れて来るから、10分待ってろ!」
「おい、遥!」
紺の声が背中を追いかけたが、俺は構わず走り出した。
見つけるしかない。
先輩達のショーをあのアホ女のために台無しにするわけにはいかない。