僕のミューズ
その笑顔は、他の何者にも代え難い、たったひとつの宝物。
「今日は、芹梨が花になる番だ」
そんな宝物の頬を包んで、俺は真剣に言う。
「最初で最後でいい。これから芹梨は、きっと沢山の綺麗な花を咲かせていく。沢山の人がそれを見て、幸せな気持ちになる。それでいいんだ。でも、今日だけは…」
横に綺麗に流した前髪を撫でて、その瞳に向かって指を動かした。
『今日だけは、俺だけの為に咲いて』
これから先、芹梨は沢山のドレスを着るだろう。
それはきっと、今日のドレスよりも何倍も綺麗で、何倍も人を感動させるものだ。
でも、それでもいい。
たった一度でいいから、俺の為だけに咲いて欲しい。