僕のミューズ
「はるか」
その声は、狭い廊下に、俺の心に透き通る様に響く。
そしてはにかむ様にくしゃっと笑って、その指を大きくピースにかたどった。
まるで無邪気な子供の様な笑顔。
ランウェイの上で見せる様な完璧な笑顔ではないその笑顔を、他の誰にも聞かせないその声を。
俺は忘れないように、全力で心のシャッターを押した。
その姿は、他の誰も見ることができない。
俺だけの、たった一人のミューズ。
世界で一番可愛くて、そして世界で一番大切な彼女に、俺も全力でピースサインを返す。
ふわりと舞った青い花びらは、二人の間に伸びる二人だけのランウェイに、そっと優しく落ちて行った。