僕のミューズ
街を見下ろす大きな広告塔の真ん中で、胡座をかいた芹梨がくしゃくしゃな笑顔で笑っている。
デニムのショーパンにゆるいシャツ。
髪型もゆるく巻いてあるだけで、ワックスもヘアアクセも何も付けていない。
俺が立ち上げたブランドのコンセプトである『自然体』を全身で表しているその写真は、俺が一番気に入っているものだ。
沢山の人の目につくその広告塔を見上げて、俺は小さく笑った。
信号が変わり、隣で話していた女子高生達は違う話題に移りながら横断歩道を渡り出す。
俺も小走りでその横を通り過ぎた。