僕のミューズ


今から行く待ち合わせ場所には、いつも通りお洒落をして、時計を見ている彼女がいるだろう。

小走りで向かう俺を見つけたら、少し頬をふくらませて見せ、その綺麗な指先で『遅いよ』と言うんだろう。

俺も『ごめん』と謝る仕草を見せると、彼女はちょっと頬を緩めて笑う。

どこに行こうかなんて話しながら、腕を絡ませて、街行く人の中にとけ込んで行くんだ。

隣で彼女は俺を見上げて、目があった瞬間、照れた様に不器用に微笑む。



その笑顔は、携帯のCMよりも広告塔よりも、ずっとずっと可愛い。



その時の彼女は、紛れもなく、僕だけのミューズ。









【fin,】









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