僕のミューズ
芹梨の指先は、いつもキラキラしていた。
服装、メイク、髪型、どこもいつも手を抜かない芹梨だったけど、爪だけはいつもその倍以上に気を使っている様だった。
俺はただ単純にいつも、綺麗だとしか思っていなかったけど。
でも芹梨にとって指先は、何より大切な場所だったんだ。
芹梨にとって手のひらは、沈黙の世界と俺達の世界を繋ぐ、唯一の手段だったから。
俺はまだ、何もわかっていなかった。
芹梨の持つ世界を。
音のない、世界を。