『霊魔伝』其の壱 木の章
「行って来まぁす。」
食事もそこそこに家を出ると小太郎が言った。
《零次朗もいよいよ高校生か。早いものだな、もう十五年になるのか。おまえと出会ってから。》
「何言ってるんだよ、今さら。それより今日は入学式だから、午前中に学校終わるはずだな。
 午後から例の所行くか。」

零次朗は昨日のことを思いだした。
零次朗の家からすぐ近くにある神社の森で、いつものように小太郎と遊んでいると、
大きな樹の裏に人が入れるほどの穴があったのだ。
今まで気がつかないのが不思議なほど大きな穴だった。
入ってみると、意外と中が広くて、しかも奥に続く道があるようだった。
明かりも無かったのでそれ以上進めず、出直すことにして帰ってきたのだ。

《ああ、行くか。ちゃんと準備してな。》
小太郎はうれしそうに言った。小太郎は零次朗と遊ぶのが本当に楽しいのだ。

零次朗がいく高校は、歩いて十五分程の所にあった。

《入学式が終わるまで、俺零次朗の行く学校見てくるな。どんな学校か調べる。》
「ああ、頼むな。中学のときのように、変なことが起きなければいいけどな。」

学校に着くと小太郎と別れた。
零次朗は入学式の行われる体育館へ向かった。
体育館にはもう大半の生徒が並んでいた。
入り口に張り出してあったクラス編成に従って、一緒に並ぶと間もなく式が始まった。
 
一方小太郎は、校舎に向かった。
校舎に中にはいると漂う霊気を感じようと心を研ぎ澄ました。

小太郎は霊気を感じることができる。

霊気とは、人や物が発する電磁波のような物で、幽霊だけのものではない。
人も霊気を放っている。特に人の霊気には心が宿っているという。
また多くの人が出入りする学校などには、特に様々な霊気が漂っているのだ。
悲しみや怒り、喜びなどが霊気の中に溶け込んでいる。
その中でも注意しなければいけない霊気がある。それは恨みや妬みの強い気だ。
それらの霊気は、人に影響を与える。
弱い心を持つ者は、その恨みや妬みを受け入れてしまい、
いつしか人を憎むようになってしまうのだ。
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