『霊魔伝』其の壱 木の章
中学ではそれが原因で、零次朗は大変な目にあった。
その憎しみの的に零次朗がなり、いじめにあったのだ。
零次朗は小太郎の力に助けられ、中学校に漂う悪い霊気を浄化し、
正常な状態に戻すことができた。
それ以来本当の零次朗を知る者は、学園陰陽師の零次朗と呼ぶようになった。

小太郎は一階から二階に上がり、そして三階へと行ったが特に変な気配はなかった。

最後に屋上へ上がると、妙な気配を感じた。

その元を探っていくと、屋上の端にあるプレハブ小屋に辿り着いた。
カギが掛かっているが、小太郎には関係ない。
壁を通り抜けて中にはいると、一人の少女がうずくまっていた。
もちろん人ではない。
生きていたときの少女の霊気が残っていて、そのエネルギーが少女の形を残しているのだ。

小太郎は声をかけた。
《どうしたのだ。おまえの名は何という。》

小太郎はまず名を聞いた。
誰にも知られず場所に縛られている少女のような場合、
自分の存在を知られることが救いになるのだ。
だから名を聞くと言うことは、存在に気づいて認めたという事になる。

《いや、来ないで。もう私にかまわないで。》
《怖がらなくても良い。俺は小太郎。おまえの友達だ。
 話してくれれば、おまえを助けられるかも知れない。》

少女はおそるおそる顔を上げた。
とても美しい少女だ。
この学校の制服を着ているので、生徒だったことがわかる。

《本当に助けてくれるの。私は理恵子、田嶋理恵子というの。》
《理恵子か。何があったのだ。》

小太郎はそっと理恵子に近づいて、肩に手をかけた。
理恵子は一瞬肩を震わせたが、ゆっくりと立ち上がり、小太郎を見た。
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