『霊魔伝』其の壱 木の章
《あなたも私と同じなのね。ねぇ私は幽霊になったのかしら。
誰も私のこと気がつかないの。ここから出ることもできないし。あなたも幽霊なの。》
《俺は幽霊ではない。理恵子も幽霊ではない。
理恵子が生きていたときの思いが残っているだけだ。
その思いが消えれば、理恵子も消える。
人の言葉で言えば、成仏すると言うことと同じだ。》
《私は消えてしまうのね。》
《人は皆、いつかは消えてしまうのだ。
いや、消えると言うよりも、この地球を構成するエネルギーに還元されるのだ。》
《よくわからないけれど、私はここから出たいの。》
《そうか。俺の力ではおまえをここから出すことは難しい。
だが、助けてくれる者がいる。少し待っていろ。》
《ここから出してくれるというなら、待っています。》
小太郎はプレハブ小屋から出ると、零次朗のいる体育館に向かった。
体育館では、校長が祝辞を述べている。
小太郎は零次朗を捜した。
あくびをかみ殺している零次朗を見つけると、そばに行き囁いた。
《零次朗。話がある。一緒に来てくれ。》
「何を言っているんだ。まだ式の最中だ。もう少し待て。」
零次朗が小声で返事をすると、横に座っている女子生徒が、
肘で零次朗の脇を突っついてにらんだ。
「すいません。」
零次朗は謝った。
小太郎はその様子を見て笑った。
「こら笑うな、小太郎。向こうに行ってろ。」
「静かにしなさいよ。」
女子学生が小声で注意した。
零次朗は赤面した。
突然肩を叩かれたので振り向くと、担任らしい女性教師が小声で行った。
「君、トイレに行きたいの。赤い顔して落ち着かないようね。
さぁ無理しないで行ってらっしゃい。
高校生にもなって、漏らしたら格好悪いでしょ。」
零次朗の周りでクスクスと笑い声が起きた。
小太郎が大笑いしている。
零次朗は小太郎をにらんだ。
小太郎は笑いを抑えながら言った。
《ははは、ちょうど良い。トイレに行こうぜ。そこで話をしよう。》
誰も私のこと気がつかないの。ここから出ることもできないし。あなたも幽霊なの。》
《俺は幽霊ではない。理恵子も幽霊ではない。
理恵子が生きていたときの思いが残っているだけだ。
その思いが消えれば、理恵子も消える。
人の言葉で言えば、成仏すると言うことと同じだ。》
《私は消えてしまうのね。》
《人は皆、いつかは消えてしまうのだ。
いや、消えると言うよりも、この地球を構成するエネルギーに還元されるのだ。》
《よくわからないけれど、私はここから出たいの。》
《そうか。俺の力ではおまえをここから出すことは難しい。
だが、助けてくれる者がいる。少し待っていろ。》
《ここから出してくれるというなら、待っています。》
小太郎はプレハブ小屋から出ると、零次朗のいる体育館に向かった。
体育館では、校長が祝辞を述べている。
小太郎は零次朗を捜した。
あくびをかみ殺している零次朗を見つけると、そばに行き囁いた。
《零次朗。話がある。一緒に来てくれ。》
「何を言っているんだ。まだ式の最中だ。もう少し待て。」
零次朗が小声で返事をすると、横に座っている女子生徒が、
肘で零次朗の脇を突っついてにらんだ。
「すいません。」
零次朗は謝った。
小太郎はその様子を見て笑った。
「こら笑うな、小太郎。向こうに行ってろ。」
「静かにしなさいよ。」
女子学生が小声で注意した。
零次朗は赤面した。
突然肩を叩かれたので振り向くと、担任らしい女性教師が小声で行った。
「君、トイレに行きたいの。赤い顔して落ち着かないようね。
さぁ無理しないで行ってらっしゃい。
高校生にもなって、漏らしたら格好悪いでしょ。」
零次朗の周りでクスクスと笑い声が起きた。
小太郎が大笑いしている。
零次朗は小太郎をにらんだ。
小太郎は笑いを抑えながら言った。
《ははは、ちょうど良い。トイレに行こうぜ。そこで話をしよう。》