共に在る者

2】出逢い

「どうしてそんなに泣いているの？」
　
　少女の頭上に突然声が振ってきた。

　通りかかった老婦人が少女に声をかけてきたのだった。
　
　

　涙で頬を濡らした五歳と思しき少女がおびえてしまわないように、優しい声音、温かい笑顔で尋ねる。
　

　少女に声をかけた老婦人はこの大樹より北西の地域にある集落に住んでいる。

　今までに見たことのない少女の服、髪と瞳の色、そしてどことなく人間離れした雰囲気をかもし出している少女。

　普通なら声をかけることすらためらってしまいそうだが、こんなにも泣きじゃくっている少女を見捨ててはおけず、歩み寄ってゆく。


「あなた1人?」
　
　老婦人の言葉を聞いて、自分が1人きりなのだと改めて思い知った少女は更に涙を溢れさせる。



「わか…らない。ひとり…な…の……。わた…し……ひとりなの…」
　
　しゃくりあげる少女の言葉はうまく出てこない。
　

　老婦人の優しく温かな眼差しを受けて、今までせき止められていた悲しみが一気に溢れ出し、とうとう大きな声を上げて泣き出してしまった。
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表紙・目次

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