共に在る者
「あらあら…。そんなに泣かないで」

 少し前にかがんで少女に向かってそっと手を差し伸べる。

 老婦人は指先で涙をぬぐってやる。

 しわが多く生活に疲れている手ではあったが、人柄同様温かみのある手だった。



「私はマーサ。今は1人で暮らしているの。

 あなたさえ良かったら私の家に来ない?

 もうすぐ日が暮れて、とても外にはいられないほど寒くなるわ」
 

 少女の前に座り込んで手を伸ばす。
 


 少女は初めのうちはどうしたらよいのか分からず、差し出された手をじっと見ているだけであった。

 
 しかし、老婦人が辛抱強く微笑み続ける様子を見て、おずおずと手を伸ばして老婦人の指先を自分の小さな手で握り締めた。



 

 泣きはらして真っ赤になった大きな瞳がようやく落ち着きを取り戻す。







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