共に在る者
 暖炉の前でしばらく何もせず、黙ってただ座っている二人。
 



 マーサは深呼吸すると、少女に向き直る。

「なら、私があなたの名前をつけても良いかしら?

 もし、あなたがよければだけれど……」
 

 話を切り出したのはマーサだが、あくまでも少女に選択を委ねる。
 

 少女は俯いていた顔をゆっくりと上げ、それからマーサの方へと顔を向ける。

「あなたはきっと迷子だと思うの。

 すぐにお家の人が迎えに来てくれるだろうけど、それまでの間ずっと『お嬢ちゃん』と呼ぶのは寂しい気がするのよ。

 そう思わない?」
 
 隣に座る少女の顔色をうかがう。
 


 優しく微笑むマーサの目をじっと見つめ、少女はそのまま一言も発せず、身じろぎすらしない。




 暖炉にくべられた薪がぱちぱちと燃える音だけが響く静かな時間。


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