共に在る者
 その沈黙を破ったのは少女のほうだった。

 2,3回瞬きしたあと、コクン……と大きくうなずいた。


「名前……付けて。そのほうが良いと思うから……」
 
 自分の家族にはすぐに会えないと直感的に察したのかどうかは分からないが、少女はマーサの申し出を了承した。



「そう……。分かったわ」

 マーサは右腕を伸ばして少女の肩を抱き、細く小さな身体を引き寄せる。

 少女はされるがままに、マーサに身を預ける。



 肩に置いた手で心臓が刻むリズムと同じようにトン、トン……とあやすように軽くたたきながら、マーサは提案する。


「ねぇ、『リリ』という名前はどうかしら」


「リ、リ……?」

 少女は小首をかしげて、小柄ながらも少女よりは幾分視線の高いマーサを見上げる。


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