共に在る者
「……わかんない。

 でも、とても懐かしいって思ったの。

 私はこの名前にぜんぜん覚えがないのに……。

 だけど、そんな気がしたの」

 失った記憶を思い出すきっかけが見つかりそうで、少女は嬉しそうだった。

 そんな少女を見て、マーサも顔もほころぶ。

 

 少女の肩に置いていた手をゆっくりと移動させ、優しく少女の頭をなでてやる。

 ゆっくりと、何度も何度も。


「もしかしたら、あなたの本当の名前に似ているのかもしれないわね」
 
 少女と視線を合わせたまま、マーサはにっこりと微笑む。

「そのうち今のように、何か思い出せそうになることがあるかもしれないわ。

 そうすればあなたは家族に再会できるはずよ。

 だからあまり悲しいと思わないで。

 きっと大丈夫だから」
 
 少女はなんと言って良いか分からず、黙ったまま見上げている。
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