共に在る者
2章 2人での生活

1】リリの想い

 こうして始まった2人の生活は実に質素な暮らしぶりであった。


 食事は自分達が育てた野菜や、家畜から搾り取ったミルクなどが主で、とてもご馳走とは呼べない代物。

 リリの洋服だって、マーサのお古を手直しした物。

 身の回りの物は必要最低限の物だけ買い、その他の物は手作り。



 それでも、2人はとても幸せそうな空気に包まれていた。

――――自分はもう1人ではない

 
 その安堵感が互いの心を満たしていたのだ。

 お金や品物には換えられない安らぎが、この小さな家には溢れていた。





 まるで燃えるように、真っ赤に染まる山々を眺める季節を迎えること5回。

 マーサの愛情を注がれてすくすくと育ったリリは、村でも評判の美しい少女となっていた。


 この村で、いや隣の町でもリリのことを知らない者はいなかった。
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