共に在る者
 村の子供たちが身に着けている衣服と同じものを纏っていても、リリ独特の雰囲気は相変らずであった。

 しかし、誰一人としてリリを怪しんだり、けなしたりする人はいない。

 リリと初めて会った人は、確かに不審そうな顔をするが、彼女のくったくのない笑顔を一度目にすれば、たちまちリリのとりこになってしまうのだ。

 リリには人を惹きつける要素があるのだろう―――本人はまったく自覚していないようだが。


 リリは自分よりも大分年下の子供からは『リリ姉ちゃん』と呼ばれて、毎日のように誰かしらが遊びに誘いへ来るほど好かれていた。

 更にはマーサと同じくらいの年配者からも自分の孫同様に可愛がられ、リリは幸福ともいえる時間を過ごしてきた。
 
 そして、リリと同様にマーサにとっても幸福な時間であった。






 マーサは『リリ』という名前をつけた翌日、少女の家族についての手がかりを得るために村中の住人に聞いて回った。

 役場にも届けを出したが残念ながら誰も手がかりになるような情報を持ってはいなかった。


 いずれは何らかの知らせがリリとマーサの元に届くであろうと信じ、二人ともあえてそのことに触れずに過ごしてきた。

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