共に在る者
 しかし、数年が過ぎてもリリの身元に関する情報は一切耳に届くことは無く、それだけがリリの心に影を落としている。
 

 人前では明るく振舞っているのだが、ふとした拍子にリリは表情を曇らせる。


 それもそうだろう。

 自分の家族に会うことも無く、加えて家族に関する情報すら耳にしてこなかったのだ。

 いくら周囲の人たちに温かく見守られていようにも、こんなに幼い子供が不安に思わないはずは無い。


 マーサは今までに何度かリリの暗く沈んだ表情を見てきた。

 しかし、彼女は人の気配を感じると途端に笑顔を作り、悲しい顔を人に見せることはけしてしなかった。


 もちろん、リリが無理をしていることはマーサも充分に承知していた。

 
 だが、“自分や村の人たちに心配かけたくない”というリリの優しさが伝わり、その気持ちを無駄にしたくないために、マーサはあえて追求することをしてこなかった。
 

 だが、今夜はどうもリリの様子がおかしい。

 ふと考えてみると、リリがこの村にやってきて今日でちょうど5年目だということに気がついた。

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