共に在る者
 さすがに“5年も自分の家族と離れて過ごしてきた”ということが、リリにとって相当な悲しみとして積もり、心が深く沈んでいた。


 その証拠にベッドの縁に腰を掛けてため息をつくリリにマーサが歩み寄っても、リリはただ床板を見ていて近づくマーサにはまったく気付かない。
 

 リリの左側にそっと腰を下ろし,マーサは声を掛ける。

「リリ……」
 
 マーサに呼ばれて、リリは初めてその気配に気が付いた。

 とっさにいつものように笑顔を作ろうとするが、涙で潤んだ瞳はごまかせない。



「あっ……。

 これはなんでもないの。

 なんだか目が痛くって……」
 
 慌てて目元をぬぐうリリ。


「自分の家族の事を考えていたのでしょう?」
 
 マーサが尋ねた。

 こう言う時はあれこれ回りくどく聞くよりも、単刀直入に切り出したほうが相手も話しやすくなるものだ。
 

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