共に在る者
 だが、リリの想いをすべて語っている言葉ではない。


「あなたが楽しく過ごしているのは知っているわ。

 でも、家族のことはずっと気になっていたのでしょう?」

 マーサは静かに尋ねた。


「……うん」

 リリは『ふぅ』と、ため息をつき、天井を見上げる。


「今までずっと、みんなから大切にされてさ。

 私、すごく幸せ者だと思うんだ。

 だけどね……」

 そのままの姿勢でリリは言葉を止め、軽く下唇をかむ。


「だけど?」

 マーサは優しくセリフの先を促す。

 彼女のしわくちゃの手はリリに重ねたままである。


「だけど、私に家族がいるなら会いたいんだ。

 今でも自分の名前も何も思い出せてないんだけど……。

 思い出せないからこそ会ってみたいの」
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