共に在る者
ところが、育ち盛りであるはずの年頃にしてはずいぶんと細すぎる体。

 袖口から見える手首は折れそうなほどだ。

 表情は子供らしからぬ程、どこか疲れきっていた。

 寒さのせいかもしれないが、それにしても顔色が悪すぎる。

 かなり心を病む出来事があったのかもしれない。

 それ故に身も心もやせ細る。


 命在る者とは心の有り様が体に多大な影響を与えるものなのである。


 同じ年頃の子供であれば、親の愛情を一身に受けてすくすくと育っていることだろうに。

こんな幼い少女に何があったのか……。




 青年はそっと手を伸ばし、少女の体に積もった雪を払いのけた。

 そして羽のように軽いその身体を抱き上げる―――まるでわずかな力加減で壊れてしまう氷細工を扱うように、大切に、大切に。

するとブルリ、と身震いをして少女がゆっくりと薄く目を開けた。

そして、目をしぱたたかせる。

時の頃は昼だと言うのに、雪雲に厚く覆われていている空からはうっすらとしか陽が漏れてこない。


長い間閉じたままだった瞳には、曇り空と言えどわずかにある陽射しが突き刺すように思えたのだ。

何度か瞬きを繰り返し、ようやく戻ってきた少女の視界には、これまでに会ったことのない青年の顔があった―――心配そうに自分の顔を覗き込んでいる。

少女が目を開けたことで、青年の顔に安堵の色が浮かぶ。

目にしただけで心奪われてしまう微笑。

一度見たら忘れることなど出来ない、それほどまで強烈に整った美貌。


でも、少女にはまったく見覚えが無かった。


記憶に無い―――それなのに、どこか懐かしさすら感じさる青年。
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