共に在る者
3章 白い季節

1】晩秋、そして初冬

 2人が暮らす小さな家の窓から見える大樹がすっかり葉を落としてしまった頃から、マーサは寝込みがちとなった。 


 始めはちょっとした風邪の為に、ベッドで横になっていただけだったのに。

 しかし、加齢による体力の衰えと、もともと肺が丈夫ではなかったことが更に病状を悪化させる要因となってしまっていた。

 寝たきりの日々が長引くにつれ食欲も徐々に衰えてゆく。

 マーサが大好きなリリ特製のライ麦パンも雪がちらつく頃には一口、二口がやっと……と言う有様。

 しかもそれは1回の食事量ではなく、1日分なのだ。

 リリはどうにかマーサにパンを食べてもらおうとあれこれ工夫を凝らす。

 焼き方や粉の配合を変えたりして出来る限り食べやすいパンを目指すのだが、どんなに美味しく出来上がったパンでもマーサの体がそれを受け付けない。
 

 最近では固形物が一切喉を通らなくなってしまった。

 野菜を煮込んだスープをほんの何口か飲んだ所で手が止まってしまうほど、マーサの病状は深刻だった。
 
 微熱が続くけだるい毎日。

 起き上がる体力すらなくなってしまったマーサは、すっかりベットの住人となってしまっていたのである。
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