共に在る者
 微熱とはいえ、通常よりも体温が高いはずなのだから少しくらい顔に赤みが差してもいいはずなのに。

 食事をろくに取らなくなって久しいマーサの顔色はかなり良くない。
 
 夜の冷え込みのせいか、昼間に比べて、顔色は紙の様に白い。


 わずかに上下する布団の動きがなければ、彼女が生きていることすら分からないほどに、マーサの病状は深刻の一途をたどる。


「マーサ……」

 血の気の失せたマーサの顔を見ているうちに、リリは泣きそうになる。
 
 が、唇を噛み締めぐっとこらえる。

「……いけない。私がここで泣き出したら、せっかく休んでいるマーサが起きちゃう」

 爪が手の平に食い込むほど強く握り締め、大きく深呼吸して悲しみを押さえ込む。



「マーサは絶対に治るんだから……。
 
 絶対、絶対治るんだから。

 今、私が悲しむのはマーサが元気にならないと思っていることと同じだよね。

 だから……、だから、私は泣いたりしない」


 涙がうっすらとにじむ目じりを小さな手の甲でごしごしとこすっては、涙をぬぐう。

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