共に在る者

2】優しい嘘

「マーサ、ただいまぁっ」
 
 翌日、町に出かけて頼まれていた用事を済ませたリリ。

 大急ぎで足元の悪い雪道をかけるようにして帰ってきた。

 途中何度か足を取られて転んだりもしたが、胸に抱いた薬草入りの袋だけはしっかりと手放さずに。

 歩きにくい道を小さい足で懸命に進んできたようで、リリの肩は呼吸をするたびに弾み、頬は真っ赤なりんごのように染まっている。

 
 いつものようにベッドでまどろんでいるマーサのもとに駆け込んだ。

「おかえりなさい、リリ。……そんなに慌ててどうしたの?

 頭にも肩にも雪が付いたままよ」

 リリの帰宅にうっすらと目を開けたマーサ。

 ベッドの横の小さなテーブルには、リリがマーサのお昼用にと用意していったライ麦パンが手付かずのまま残っていた。

「マーサ、……お昼食べてないの?」
 
 リリは濡れた手袋をはずしながら、おそるおそる尋ねた。

「……ああ、ごめんなさい。今日はあまりに眠くて、ずっと寝てしまっていたの」
 
 マーサが悲しそうに微笑んだ。
 
 それは真実ではない。

 たった一口のパンすらも食べる気を起こさないほど、マーサは病魔に冒されていた。
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