共に在る者
 用意してくれたリリに対して申し訳ないという思いと、余計な心配をかけたくないという気持ちからの嘘―――優しい嘘。

「そっかぁ」
 リリはマーサの言葉を信じた。

 心の奥で“本当は違うのでは?”という考えもあったが、真実を知るのが怖いあまり、信じることにしたのだ。

 幼いリリに出来る精一杯の心の防御。



 でも、今日のリリは少しばかり心強い味方がいる。

 町で一番評判の良い薬屋で薬草を買ったのだ。

 “これさえ飲めば、マーサの病気はよくなる”と、信じて疑わず、一刻も早く飲ませたくて、必死で走ってきたのだ。

「今日ね、町で薬草を買ったの。熱を下げるのにいいんだって。

 お店の人が一生懸命選んでくれたの。

 今、煎じてあげるから、ちょっと待ってて」
 
 肩に積もった雪を払う時間すら惜しんで、急いで台所へと向かう。


―――大丈夫。マーサはきっと良くなるんだから……。
 
 お湯を沸かしながらリリは繰り返し口の中で小さくつぶやく。

 まるで自分に言い聞かせるように。

 そうでもしないと、マーサの様子を見るたびに悪い方向へと考えがめぐってしまうからだ。
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