共に在る者
 沸騰したヤカンに町の薬屋の主人が揃えてくれた数種類の薬草を入れ少しの間煮立たせると、程なくして薬草独特の香りがベッドで横になっているマーサの元にも届いてきた。
 
 煎じた薬湯をマーサ愛用の湯飲みに移し、こぼさないようにゆっくりと運んでゆく。

 リリはベッドの脇に備えられている木の丸テーブルにそっと湯のみを置いた。

「お店の人がね、飲みやすいようにってあまり苦くない薬草を出してくれたんだ。

 少しでもいいから飲んでみて。」

 リリはマーサの背中を支えてベッドの上に起こしてやると、薬湯の入った湯飲みを持たせてやる。

「まだ熱いと思うから気をつけてね」

「ありがとう、リリ」

 マーサは湯飲みを両手で受け取り静かに微笑むが、薬湯などではもうどうにもならない状態だとマーサ自身悟っていた。


 それでもリリの心遣いを無駄にしないように、そして少しでも安心させてやりたくてゆっくりと一口、また一口と飲み下す。
 
 独特の香りはあるものの、リリが言ったとおり薬湯にしては苦味が少なくて飲みやすかった。
 
 ふぅ……と小さく息を吐き、マーサは空になった湯飲みをリリへと差し出す。

「ごちそうさま」
 
 弱々しいながらも、微笑を浮かべるマーサ。
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