共に在る者
「……薬湯飲んだから、良くなるよね?」

 湯飲みを受け取ろうと手を伸ばしながらリリはそっと尋ねる。

 そうは言いつつも頭の奥隅で嫌な考えがちらりと掠めたが、慌てて無理矢理に追い出した。


「……ええ、そうね。

 リリが一生懸命に持ってきてくれたんだもの。

 よくなると思うわ」

 長い闘病生活のため今ではすっかりやせ細り、骨が目立つようになってしまった手でリリの頭をなでてやる。
 
 マーサがこの5年間の中でリリに対して嘘などつくことはなかった―――寝込むまでは。

 またしても優しい嘘……。

 リリの頭をひとしきりなでてやった後、マーサはどこか悲しげにうつむき、

「これからも、心を強く持つのですよ」

 と、湯飲みを持つリリの手に自分の手を重ねた。


 まだ幼いリリにはその言葉の意味する所が判らず、首を傾げて重ねられた手をじっと見ている。

「強く……強くありなさい」
 
 そう言ってマーサは深く息をつき、再びベッドで横になる。
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