共に在る者
 マーサは頭をめぐらせて、いつもリリがそこから大樹を眺めている小窓に目をやる。
 
 暖炉による熱気と、冷たい外気との温度差で小窓にはめられたガラスはうっすらと白く曇っており、大樹は見ることが出来なかった。

 仮に窓が曇ってなかったとしても、目の弱くなったマーサには外の様子が見えなかったことだろう。

 長くベッドに伏しているうちに、病気はマーサから色々な物を奪っていった。

 体力、気力、食欲、―――そして視力。

 今では目を凝らさなければリリの表情が見えない。




 ガラスに打ち付けるように雪は降り続いている。

 先程よりも激しく降りしきり、幾分風も出てきたようだ。

「今年の冬はずいぶんと積もりそうだわねぇ……」



 降りしきる雪を眺めて、マーサはポツリとつぶやいた。



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