共に在る者
懐かしい?


 と、言うことは自分はかつてこの青年と会ったことがあるということか。

少女は動かない頭で考えてみる。



 一体、いつ、何処で会ったのだろう。

 会っていたとしたら、どうして思い出せないのだろう。

 こんなに魅力的な微笑みをする青年を、自分はどうして忘れてしまったのだろう。

 どうして。

 どうして……。

 
 しかし、どんなに考えたところで答えにはたどり着けそうに無い。

 覚えが無いのに、記憶は手繰れないからだ。

 なので、他の方法で青年の正体を探る―――要は青年自身に尋ねるということだが。

 いささか単純ではあるが、これが一番手っ取り早い。

 少女はコクンとつばを飲み下す。


 そして、恐る恐る口を開いた。

「……だぁれ?」


 聞こえてきたのは少女に似つかわしくない、がらがらにしゃがれた声。

 声、と言うよりも、声帯を引きつらせてようやく漏れてきた空気音といったところだ。

 喉が渇いているのか?―――いや、少女の頬に残る涙の跡を見れば、長いこと泣き叫んだゆえに喉が疲れ果てたのだろう。
 
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