共に在る者

3】そして・・・別れ

 あれから雪は毎日降り続き、まるで純白の真綿にくるまれてしまったとでも思えるほど、マーサとリリが暮らす小さな村は一帯が雪深い景色へと変わっていった。

 冷たい風が吹き、雪は舞い上がる。

 春の息吹はまだ遠そうだ、


 日、一日とマーサの様態は悪化の一途をたどり、この頃にはリリに支えられてもベッドの上に起き上がることすら出来なくなっていた。

 特にこの2,3日は意識が途切れることもあり、リリにとって不安でたまらない日々が続く。

 心配のあまり、リリは片時もマーサのそばから離れることが出来ず、ベッドの脇の小椅子に座り、横たわるマーサの無事を願う。
 
 リリは小さな自分の手で痩せて骨と筋だけとなってしまったマーサの手を握り締め、ひたすらに『大丈夫、……』と、つぶやき続けた。


 以前、マーサがまだベッドの上に起き上がれていた頃に、村にいる医者に往診をお願いしたことがあるのだが、その時手渡された薬はもう残ってはいない。

 医者は薬の入った紙袋をリリに渡す際、『この薬がなくなる前に町にある大きな病院に移ったほうが良いのだが……』と言葉を濁しながら差し出した。

 医者が言葉を濁した理由は“この家には大きな病院で診てもらうだけのお金がないから”だった。


 お金がなくたって、家が小さくたって、マーサとリリの2人は幸せだった。
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