共に在る者
「……あなたは本当に、良い子……ねぇ」

 最後の力でマーサはリリの頭をゆっくりとなで、嬉しそうに目を細める。


 そしてマーサの手は止まる。

 パサリと乾いた音を立てて、マーサの腕が静かに布団の上に滑り落ちた……。




 リリは目の前で起きていることが全く理解できず、ただ呆然と立ち尽くす。
 
 マーサの顔があまりにも穏やかすぎて、眠っているようにしか見えない。

――――何が……起き……た……の?
 
 まったく動かなくなったマーサのそばで、リリもピクリともしない。





 どれほどの間リリはそのままでいたのだろう。

 
 全ての感覚が麻痺してしまい、半日もそのままでいたようにも思えたが、実際にはほんの数分のこと。

 何をするわけでもなく―――いや、何もすることが出来ず、ベッドの横に立ち尽くしてマーサを見下ろしている。


 呼吸することすら忘れて。
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