共に在る者
――――マーサ、どうして目を開けないの?

――――どうして動かないの?

――――なんで、息を……してない……の?
 
 頭の奥の、更にその奥がぼーっとしてくる。


――――なんで……?どうし……て……?
 
 幼いリリは困惑のあまり、泣き出すことすら出来なかった。




 しばらくしたのち、ふぅ……と小さく音を立てて息を吐いたことで、リリは一気に現実に引き戻される。

 頭が冷静になるにつれて次第に状況が飲み込めてきたリリだが、マーサの死をすんなりと認めることが出来ない。

「マァ……サ……?」
 
 震えのあまり歯がカチカチと音を立て、喉はからからに渇いて引きつってしまい、うまく声が出せない。

「マ……サッ」
 
 それでも全身の残された力を振りしぼって、目前で横たわる老婦人の名前を呼ぶ。

 まるで、天に旅立とうとしているマーサの魂を引き戻さんばかりに。

「マー……サッ。マーサァッ!!!」

 あまりに必死に呼ぶので、リリの声はまるで悲鳴のようだ。
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