共に在る者
「じゃあ、そのライ麦パンを作ってあげましょうね。材料はある？」

「うん。ある」

「ジェイクが戻ってくる前に始めてしまいましょう。

　そのパンが焼けたら、あなた食事にしなさいね。

　その様子じゃ夜も大して食べてないのでしょう？」

　ほんの少しだけ怒った調子のシャリナ。
　

　でもそれはリリを心配する優しさの現われ。

　リリの周りにはいつも、いつでも、心優しい人がいてくれている。


「だって……。それどころじゃ……なかったんだもん……」

　夕べのことを思い出し、またぐしぐしと涙ぐむリリ。

「それは良く分かるわ。
　
　あなたの大好きで、大切なマーサが亡くなったんだものね。

　でも今は、少しでもいいから食事をしましょうね。

　マーサは元気なあなたが好きだったんだから。

　食べないと元気は出てこないわ」

「うん……。わかった」


　悲しみが大きすぎて感覚の麻痺しているりりは空腹を感じることはなかったが、シャリナの気持ちがありがたくて素直に応じることにしたのである。

「さあ、作りましょうか？」

　シャリナはリリの背中を軽く押し、一緒に台所へと向かった。
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表紙・目次

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