共に在る者
「……ううん」
 力なく頭を左右に振るリリ。

「パンだけでいい。あとの物は残しておくから」 

「そう……」
 
 リリの返事を聞いて、マーサの棺の蓋が仮止めされる。
 

 そして村の男達6人が棺の左右に分かれて持ち上げ、マーサとリリが過ごした小さな家から運び出していった。

 マーサとリリ、2人で過ごした小さな家から棺が運び出され、村の中心部にある教会へと向かってゆく。

 穏やかな人柄のマーサは村の誰からも好かれ、葬儀に参列しているのは、どうしても都合がつかない者以外の村人全員だった。

 教会に運び込まれた棺の周りにはマーサの訃報を聞いた人々が集まり、涙を流して別れを惜しんでいる。

 皆のすすり泣きが聞こえる中、黒衣の正装を身にまとい、聖書を手にした神父が棺へと歩み寄る。

 参列者にマーサの顔が見えるように蓋の仮止めをはずす。

 横たわる彼女の顔を見たことで、一層のすすり泣きが響き渡ってゆく。

「それでは……」
 
 神父が聖書を開いて別離の文言を述べ始めると、大人も子供神妙な面持ちで目を閉じるのだが、リリは少しでも長くマーサの顔を見ておきたくて、涙をこらえた大きな瞳でじっと、食い入るように見ている。
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