共に在る者
「マーサ……」

　あまりに綺麗な顔で棺の中に横たわっているマーサ。

　一度はマーサの死を受け入れたリリだが、その死は嘘ではないのかと思わせるほど、彼女の死に顔は穏やかそのものであった。
　
　首から下げた十字架を軽く握り締め、神父は追悼の儀式を終わらせると、ずらされていた棺の蓋が角を合わせてきっちりと乗せられる。

　そして４隅を長く太い釘で打ちとめてゆく。
　
　釘を打つガツン、ガツン、という鈍い音が静まり返った教会に響いた。



　神父が釘を打ち終えると、ここまで棺を運んできた６人の男性が前へ歩み出て、ゆっくりと棺を持ち上げた。

　そして建物の横にある墓地へと運んでゆく。その後から神父を先頭にして皆がついて行った。
　

　雪をかき分けて掘られた細長い穴へ棺を下ろす。掘りたての土の上にゆっくりと……。

「リリ。マーサに最後のお別れを言ったら?」
　
　そばに立つシャリナに促されるが、リリは視線を棺に固定し一言も発しない。

　静かに溢れ出したリリの涙は頬を伝い、足元の雪へと吸い込まれてゆく。
　
　どんな言葉をマーサにかけて良いのか、リリには全く分からない。　


　崩れ落ちないように立っているだけで精一杯なのだ。
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表紙・目次

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