共に在る者
 やがて穴に納められた棺の上に、大きなシャベルで男達が少しずつ土をかけてゆく。


 不意にリリが走り出した。

「あっ、リリ!待ちなさい、どこに行くのっ!?」

 リリは埋葬されるマーサの姿を見たくなくて、シャリナの制止の声を振り切りその場から走り去った。
 
 走って、走って。


 雪の上に何度転んでも走り続けて。
 
 
 リリはどれほど走ったのだろう。気が付けばあの大樹の下に立っていた。
 
 5年前と何一つ変わらず、どっしりと力強く根を下ろしている大樹。

 大切な、大切なリリとマーサとの始まりの場所。



 雪の中を走ってきたりりの手は痛いほどに冷えきってしまっている。

 そのかじかんだ小さな手をゆっくりと伸ばし、引き寄せられるように樹の幹に触れてみると、そこからなんとなく温もりが伝わってきたとリリは感じた。
 
その温かさは初めて会ったときのマーサを思い出させて、更に涙が溢れてくる。

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