共に在る者
「強く……なんて、なれ……ないよぉ」
 
 寒さと涙でリリの声が震える。


「強くなんて……なれ、な……い。

 マーサが……いなくちゃだめ、だもん……」
 

 シャリナに『悲しみにくれていてはだめだ』と言われたが、リリには無理だ。

 10歳の少女にとって大好きなマーサが亡くなった事は悲しみ以外のなにものでもないのだから。
 
 マーサを失ったリリは不安に押しつぶされそうになる。

 何も分からず、たった一人で大樹の下にいた過去の自分と重なり、より一層恐ろしくなる。



「マーサ……」
 
 リリは大樹に寄りかかるようにうずくまり、膝を抱える。

 風にあおられた雪がリリに吹き付けられ、小さな身体は程なくして雪に埋もれてゆく。

 1人きりだという絶望感のあまり、身を切るような厳しい冬の寒さすら感じない。



 時を追うごとに雪と風は強さを増してゆき、容赦なくリリの上に積もっていった……。
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