共に在る者
エピローグ
 どういう訳だか、リリと青年の周りだけ吹雪が止んでいる。

 深冬の空気はあまりに冷たく突き刺さるほどだというのに、全くそれを感じさせない。

 実は二人の周りに透けるほどに薄い膜を思わせる境界が出来上がっていた。

 そんな人間離れした技を青年はこともなげにやってのける。




「誰……?」

 リリは自分を抱き上げている青年に問いかける。
 
 ただ、この質問にはあまり深い意味はなかった。

 誰でもいいのだ。

 孤独感に押しつぶされてしまわぬよう、誰かのそばにいられればどんな相手だっていいのだ。


 かじかむ指をどうにか動かして自分を抱き上げている青年の腕をそっと、でもしっかりとリリはつかむ。

 冷えきってしまっていた小さい手の平に人肌の温もりがじんわりと伝わり、心のそこからホッとしたリリは、ゆっくりと息を吐く。
 
 大樹の下にうずくまり、吹きすさぶ吹雪に埋もれてしまってから数時間が経過しており、今ではすっかり辺りは夜の闇に包まれている。

 長いこと雪の下にいたリリの身体も心もまるで氷さながら。体温を奪われ、顔色も良くないリリであったが、青年に触れている所から全身に温もりが広がってゆく。
< 65 / 75 >

この作品をシェア

pagetop