共に在る者
 一年中変わることのない柔らかな日差しを浴び、一瞬たりとも枯れることのない花々が見渡す限りこまでも続くなだらかな丘。
 
 頬をなでてゆく風、澄み渡った空、朗らかな小鳥達の歌声。

 全てが愛情で包まれている世界がそこにあった。
 
 天使の住む世界、天空界である―――人間界とは異次元にあるものの、とてもよく似た世界。
 

 その丘の中腹辺りに、詳しい材質は分からないがどっしりと重厚感を持ちつつも気品があり、淡い光沢を放つ大理石の様な風合いの壁で出来た建物がたっていた。
 
 
 キィィィ……。
 
 小さくきしむ音を立てて、その家の扉が開いた。

 背がすらりと高く、肩幅も広いがっしりとした体型の男性がまず姿を表す。歳は30代後半ぐらいだろうか。

 ただし、天使は一定の年齢に達するとそこで年を取らなくなるので、実際の年齢は分からない。
  
 次いで初めに現れた男性よりも頭1つ分低いほかはとてもよく似ている年若い青年が、なにやら家の中に向かって声を掛けている。

 青年に呼ばれるように出てきたのはまるで聖母マリアを思わせる顔立ちの女性。

 

 三人の背中にはそれぞれに一点の染みもない真っ白な翼があった。

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