共に在る者
 美しい巻き毛を持つ優雅な仕草の女性の腕の中には、まるでもろいガラス細工のように大切に、大事に抱かれている生後間もない赤子がいた。

――――あれは……。あれは、私っ!?

 その後も時間の波は次々と押し寄せ、リリは大まかながらも今まで失っていた記憶を少しずつ取り戻してゆく。

 しかし、時の流れに逆らったこの状況はリリに負担を強いることとなり、彼女の頭の中はまるで誰かに揺すられているようにグラグラと揺れ、正気を手放してしまいそうになる。

 何かにすがっていないと自分の心がどこか遠くへ吹き飛ばされてしまいそうな不安定さ。
 
 知らず知らずのうちに、リリは青年の腕をつかんでいた。



「リリアンヌ?」

 心配そうに自分を呼ぶ声。その声に引かれて、リリは我に返ることが出来た。
 
 そしてゆっくりと顔を上げて青年に目をやる―――小さな呟きと共に。

「お兄……ちゃん?トウヤお兄ちゃん?」

 
 青年は満足げに一層口元を微笑ませる。

「思い出せてきたようだね。でもその分じゃ、まだ自分が天使だということまでは分かっていないかな?」


――――天使!?……私が?
 
 リリは兄の発言に面食らう。
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