共に在る者
 突然自分の背中に翼を背負ったリリ。


 だが不思議なことに何の違和感も感じない。

 それどころかずっと探し続けていた小さな小さなパズルの破片を手に入れたようで、何とも言えない安堵感がリリの心に満ちてゆく。
 
 その状況を言葉で表現するのは難しいが、しいて言うのであれば『あるべき場所に戻ってきた』というところだろうか。



「本当に私、天使なんだ……」

 翼が生えた以外、外見上なんら変わらないのだが、体の奥深い所で何かが目覚めてゆく感覚をリリは覚える。


「そうだよ、リリアンヌ。君はれっきとした天使なんだよ」
 
 リリの正面に戻ってきたトウヤは話を続ける。

「母さんがほんの少し目を離したすきに、お前は家を脱け出して森の奥にある“時の狭間”にたった一人で行ってしまったんだ。

 あまりに幼すぎたお前はそこで何が起こるのか理解していなかったから、好奇心のままに足を踏み入れてしまった……」
 

 ここで軽くトウヤは息をついて、リリが話を飲み込むために時間を取ってやる。





「時空の……はざま?」
 
 初めて聞く言葉に、リリは首をかしげる。

「そうだよ。

 天空界には自由に時間と空間を行き来できる入り口があるんだ。

 僕たち家族がいなくなったリリアンヌに気付いて後を追ったときにはすでに時の渦に飲みこまれた後だった」

 トウヤの話を聞いているうちに、リリの記憶のかけら達が徐々に組みあがってゆく。

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